「男性ケアラー(介護者)のご紹介」
訪問診療にお伺いするご家庭の中には、男性介護者で奥様、お母様の介護をしてみえる方も多くおみえです。今日は奥様を介護しておられ日々こころ温まる「日記」を付けられ、私たちにもお見せ下さる坪内さんに「ぜひ、結〇日記でご紹介したい」と原稿をお願いしたところご快諾下さいました。
下記、坪内さんの日記を掲載させていただきます。
「在宅介護一年生」
「おとうさん 大丈夫?」娘からの電話。妻の介護が始まって8ヶ月になった。ある日突然食べることも、立つことも出来なくなった。話すことも出来なくなった。寝たきりになってしまった。一体何がおきたの?どうしたの?一年ちょっと前の出来事です。
パーキンソン病からくる嚥下障害から肺炎になり、入院治療中、体の機能低下が急に起き、再起出来ない状態になった。発病して丁度20年である。
「おはよう。おむつ替えるよ」と声をかけながら、ベッドを腰を痛めないため55cmまで上げ、おむつを取り替える。手を消毒してから、ヘッドを30度まで上げる。薬3種類と白湯を準備して、胃ろうに注入する。ここまで1時間30分要してしまう。昼・夕・寝る前の4回、薬やら白湯を時刻を決めて注入する日々である。だが、実態はおむつの当て方がずれていて、汚したり、便は看護師さんが来られるまで出すなよと言い聞かせておいても、出てしまうことがある。サアー大変。
「コーヒー飲むか」と声を掛けると「飲む」と声が出たり、目で合図することがある。首や胸・腹部が「かゆい」 ということもある。寒くないかと聞くと「ちょうどいい」 と。パーキンソンの薬を注入後、1〜2時間位経過した時応答する機会がたまにある。私の声は聞こえているだろう。口の周りの筋肉が硬直して発声できないと思う。だから、側にいる時は話しかけ続け、心安らかに過ごして欲しいと願っている。しかし、日常会話が出来ない事はとっても寂しい。まして、一人で料理して食べることはもっと寂しい。
今があるのは多くの支援をいただき成りたっている。退院2ヶ月前ケアーマネージャーさんに病院に出向いていただいた。施設へ預けるか、在宅介護かの意志確認がポイントとなった。私は何もしないで介護は出来ないとは言いたくなく、在宅で介護する決心をした。病院で、おむつ交換、薬の注入、痰吸引等々家に戻ってすぐやらねばならないことの研修を何回も繰り返して受けた。
自宅に戻って以降は、月2回の医師、看護師の訪問診療と週2回の理学療法士、看護師、介護士の訪問介護を受けている。更に週2回、1泊2日のショートステイを利用している。訪問診療、介護スタッフの方々からは、介護で困っていることは無いか、体調はいいかと気を配っていただける。診療が済むと登山の話や穂高山荘で診療されていたことなど、医師とは思えない楽しいひとときを頂戴している。
訪問介護では排便が困難なため毎回浣腸をし、温かいタオルで体全体を拭き、口の中もきれいにしていただいている。看護師さんは私の娘とほぼ同じ年齢でお子さんも上は同年齢である。したがって娘と話しているみたいで、修学旅行に行った話、体育祭の話、中3ゆえ受験の話、料理へのアドバイス等、これまた楽しい一時をいただいている。ショートステイは約40点の薬やタオルなど備品を前日に準備しておき、当日送迎の車にお願いしている。
ショートステイに出掛けた後は私の時間となる。火曜日は太極拳を教わっている。水・金曜日はテニスをしている。しっかり体をほぐしてから、真剣にボールを追いかけさわやかな汗をかいている。喫茶店で1時間位雑談会をし、帰りにスーパーへ寄り食料品を買って帰宅する。でも…なんにもしたくないときがあり、椅子にかけたまま、ボー としていることがある。
こうした現在があるのは、今の生活を保ちながら介護が出来るようにケアーマネージャーさんに考え抜いていただいたプランとスタッフさんのおかげである。
私は退院以降毎日反省を込めて日記をつけている。そして、温かい心で接していきたい。