「第6回日本在宅医療連合学会で演題発表しました」
院長の私は日本在宅医療連合学会大会に演題を出し、在宅医療での人工呼吸器管理について、インシデントを分析することで管理に必要なことを発表してきました。
もともと人工呼吸器は、病院内でも特に集中治療室で使用されてきたものでした。それが、この20〜30年間をかけて自宅でも使用できるように進歩してきましたが、病院内と在宅ではまだまだ注意しなければならない点があり、特に自宅では家族や訪問介護がほとんどの時間みていることです。
課題として挙げたことは、「1.気管カニューレ事故抜去時の対応」「2.痰詰まりの対策」「3.停電時の対応」の3点でした。以下に抄録を記載しましたので、ご覧ください。
「長期在宅人工呼吸器装着における重大インシデントの分析と対応」
鈴木欣宏
「目的」
長期在宅人工呼吸器装着中に経験した生命に関わる重大インシデントを報告の報告を通じ、その対策方法を検討する。
「方法」
当院はこれまで6名のTPPVの筋萎縮性側索硬化症の患者を診てきた。経過中、カニューレ事故抜去、痰詰まりによる気道閉塞、停電を経験し、それに対して多職種で協働して対策をしてきたため報告する。なお、この報告は関係する患者もしくは家族に口頭で同意を得ている。
「結果」
人工呼吸器装着者の生命に関わるインシデントとして、気管カニューレ事故抜去を3例、痰詰まりによる気道閉塞を1例、人工呼吸器装着者の停電を1例経験した。
気管カニューレの事故抜去はリハビリや車いすへの移乗時で医師・看護師のいないときに発生した。それに対しご家族への再挿管の訓練と、他の職種にはアンビューバッグをしながら救急搬送する訓練を行い、その後実際に事故抜去が起きた時に速やかに対応することができた。
痰詰まりによる気道閉塞については、人工呼吸器の設定をSIMV-VCもしくはAVAPS modeで使用することにより気道閉塞時に吸気圧を上昇させる設定にし、普段から喀痰が吸引できるようにダブルサクション式カニューレと低圧持続吸引器を使用し、喀痰吸引研修を受けた介護職と連携して安全に喀痰吸引ができる体制を整えた。
また災害時に停電した事例については蓄電池を繋げ、数時間で回復したことで重大インシデントにはならなかったが、その後72時間人工呼吸器を維持できるように電源確保のシミュレーションをし、実際停電対策の災害訓練を関連職種で実施した。
「考察」
長期人工呼吸器装着におけるインシデントは、医療関係者のいないところで起こる場合が多く、対策として多職種の連携が重要と考えられるが、それに対する対策はあまり報告事例がない。
長期人工呼吸器管理における適切な方法はまだ確立されておらず、エビデンスの積み重ねが必要と思われる。